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“PLANE SUITES TEUGE” Teuge Airport, The Netherlands

極上のおもてなしの宿   日本航空ジャーナリスト協会 「°天ニュース147号」寄稿文


1日1組限定の5☆宿泊施設

 アムステルダムから車で南東に進むこと約1時間、アぺルドールン(Apeldoorn)、そしてデベンター(Deventer)といったオランダヘルダーラント州の歴史的な街に隣接したテウゲ(Teuge)飛行場を訪問する機会があった。 この飛行場は、1199m(RW08/RW26)の滑走路が1本あるのみの小さな飛行場であるが、オランダでは「レクリエーション飛行(*)」を楽しめる数少ない飛行場であり、国境を近くにするドイツ、ベルギー、そしてフランス、オーストリアからも多くのスカイダイバーが年間1万人もやってくるメッカとして知られている。 その飛行場の中心に建設された5☆宿泊施設“ PLANE SUITES ”。

この宿泊施設は、旧東ドイツの登録番号を纏ったイリューシンIl-18を利用しており、そのユニークさにも注目が集まり、オランダ国内外で安定した人気を誇っている。

(*)レクリエーション飛行:スカイダイビング、遊覧飛行、操縦訓練など「飛行」することを複合的に楽しむこと

 

「ユニーク」さと「極上のおもてなし」が売り

 ドイツ民主共和国(旧東ドイツ)のエーリッヒ・ホーネッカー書記長が頻繁に搭乗した機体を改造したことから、別名「ホーネッカーホテル(Honecker Hotel)」と呼ばれているこの宿泊施設は2010年4月にオープンし、今年で14年目を迎えた。 一般交通の利便性が良くない土地柄にも関わらず、この飛行場に宿泊施設を建設しようとしたのかをオーナーのベン タイセン(Ben Thijssen)氏に率直に聞いてみた。

 

「商業価値」だけで選ぶのであれば、ロッテルダム(Rotterdam)空港やレリースタッド(Lelystad)空港の方が飛行場としての敷地も広く、またアムステルダムからのアクセスも悪くないので人を呼び込めます。しかし、ここに来る方のほとんどは、自家用機かチャーター機でやってきます。車で来る人のほとんどは、オランダ内のお客様か地元の空港関係者だけです。 そうなると、小さい空港で「発着時間の融通」が利き、「駐機料が安い」地方飛行場の方が家族単位、小グループで呼び込むことが可能です。これがここテウゲ(Teuge)飛行場の大きなアドバンテージであり、一点目の理由です。 二点目は、小さい空港なので夕方6時以降は基本的にフライトがない。ですから、とても静かです。宿泊の基本は「安眠」確保です。ご存じのとおり、大きな空港では朝6時から、夜は11時頃まで頻繁に発着があり、「エンジン音」が空港敷地内に響き渡りますよね。 宿泊者の視点にたってこの飛行場に建設を決定した大きな要因でもあります。この宿泊施設が飛行場の中心にある理由もご理解いただけると思います。

 

米国や豪州でも「飛行機ホテル」は人気の的ですが、そのほとんどが状態の良いアメリカ製の機体を改装し宿泊施設として一般に提供している。 なぜ、敢えて旧ソビエト製のイリューシンIl-18を選んだのかを尋ねてみた。

 

実は構想段階では、程度の良いアメリカ製(B727など)航空機を長年探しておりました。 しかし、緑が多いここテウゲ(Teuge)飛行場には、近代的な空港と異なりジェット機は風景にマッチしなく不釣り合いであると分かりました。 それからアナログ(プロペラ機)な世界を模索しつつさらに5年間にわたり飛行機を探しました。

ホテル施設に改装するために、当初より頭の中に描いていたのはサウナ、ジャグジーとキッチンと大型ベッドが収まる2m以上の胴体幅が必要だろう…という漠然としたものでした。

そうしているうちに、元InterflugのIl-18の機体がハルブケ(Harbke/ドイツ・ザクセンアンハルト州)に放置されている情報を入手しました。 この機体は引退後にカフェレストランに改装され、外装は手直しが必要でしたが、内装は手入れがされて利用された経緯もあり、致命的なダメージはありませんでした。特に操縦席の計器類とそのレイアウトはオリジナルのままでしたので、即購入を決めた次第です。

 

「口コミ」だけで予約が入る

 コロナの感染拡大で2020年3月から休業していたが、同年7月から外出規制も緩和され営業を再開している。しかし、実際の宿泊は2021年4月まではほとんど無いに等しい状態が続いたそうだ。コロナ感染拡大前(2019年)の実績では、年間の平均稼働率は90%を超えている。 その大きな要因はインターネット上の口コミ評価だそうだ。 ホテルサイトでは「満点の10」を付けている投稿も多く見受けられ、またBooking.comなどの口コミ評価ランクでは安定した9.6ポイントを維持している。

ホテル、サービス業界等のアワードにもノミネートされる機会も増え、2015年にはオランダホテル協会が開催している「ラグジュアリーホテル年間アワード」で受賞し、2019年には「Unique Hotels of the World」を受賞している。

 「1日1組限定」。 日本ではなかなか稀な宿泊形態ではあるが、逆にロスも少なく、高いホスピタリティーでお客様を迎えることが出来ることもあり、宿泊顧客の満足度も高く、リピート率も必然的に右肩上がりとなり、SNS等の口コミで宿泊客が増え、2023年のイースターから8月までの稼働率は限りなく100%に近い状況が続いたそうだ。

オランダにはこんな云われがある「オランダ人はクレイジーな眠りを好む」。

日本では味わえないこの「クレイジーな眠り」を挑戦されたい方が会員の中にいらっしゃれば是非、現地を訪問し宿泊をお楽しみいただきたい。


 イリューシンIL-18V/登録番号DDR-STD –の変遷

1962年10月28日 旧東ドイツ空軍へデリバリー Reg No.493

1964年9月3日   インターフルーク(Interflug)へ Reg.No.DM-STD

1981年8月1日   インターフルーク(Interflug)へ Reg.No.DDR-STD

**インターフルーク(Interflug): ドイツ民主共和国/旧東ドイツの航空会社

1986年10月   インターフルーク(Interflug)での運行停止

1988年11月24日  旧東ドイツ ハルブケ(Harbke)にてカフェ・ギリシャレストラン

1990年10月3日 東西ドイツの統一

2009年  オランダの実業家Ben Thijssen(ベン タイセン)に売却

2010年4月  “PLANE SUITES TEUGE”としてオープン

 

ホテル 一般情報

ホテル名  : PLANE SUITES TEUGE

住  所   : De Zanden 61b, 7395 PA Teuge, The Netherlands

連絡先   : +31-(0)6-1938 8603

ホームページ:  https://www.vliegtuighotel.nl/en/

宿泊料   : 1泊€425(2人分朝食、税金含) **日曜日から木曜日の宿泊料

        1泊€475(2人分朝食、税金含) **金曜日、土曜日の宿泊料 *2024,8月現在

チェックイン:15:00 / チェックアウト: 11:00

主要設備  : ジャグジー、赤外線サウナ、ミニバー、フラットスクリーンTV,コーヒー&ティーメーカー、無料のインターネット、エアコン、

特注のバスローブとスリッパ

**同ホテルのパッケージ(別料金)にはセスナでのフライト体験やオランダ観光フライトなどのプログラムもある。(詳細はホテルホームページで確認)












 

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